UoPeopleのCollege Algebra(MATH 1201/大学代数学)を受講して感じたつまづきと工夫したこと、数学コンプレックスの克服

Computer Scienceの学位が取れるオンライン大学University of the People(UoPeople)において、最初の数学のコースであるCollege Algebra(MATH 1201)を2021年9月〜10月(2021-2022 Term1)に修了しました。

おかげさまでコースをパスすることができたので、振り返りを書きたいと思います。ただ、コースの内容やどうやって勉強するかについてはすでに詳細にまとめられているブログ(下記)がありますので、そちらは先人に任せ、この記事では自分がコース中にどうやって数学と向き合ったか、コース中につまづいたこと、自分なりの工夫などを中心にシェアします。

empitsu88.hatenablog.com

okauuu.hatenablog.com

改めて、私が今期数学のコースをパスできたのは、先人たちが情報をシェアしてくださったおかげと(えんぴつさんのブログはコース受講前〜受講中にトータル10回以上拝見させていただきました)、UoPeopleの日本人コミュニティで開かれていた数学勉強会で丁寧に質問に答えてくださったしらたきさんはじめ一緒に勉強会に出てくださった皆さんのおかげです。本当にありがとうございました。

自分の数学歴

私は高校では数学IA、IIBまでを履修しました。今の高校と範囲が違うかどうかはわかりませんが、過去のテキストを見るに、一応複素数三角関数、指数対数、微積分などはやっていたようです。高校卒業後10年以上一切触れてこなかったために内容は殆ど忘れていました。

私は高校1年生まではそこまで数学でつまづいているという自覚がなくて(実際には理解できていない部分もあったのですが)、なんとなく高2で理系を選択しました。しかし高2から明確に数学に躓きテストで赤点を取るようになり、高3では数学を選択しませんでした。しかし文転するにも社会科などの科目についていけないだろうと逃げて中途半端な科目選択をし、大学進学を諦めたという人間です。

いわば高2で数学につまづいたせいで自分のその後の人生が変わったとも言うことができ、そんな数学という存在に対して大人になって再度向き合うことはかなりのプレッシャーがありました。実際、数学に向き合うだけで高校時代の記憶が蘇り、後悔の念がたくさん湧いてきてメンタルが落ちました。

しかし高校卒業後なぜかプログラマーとして就職し、今になってCS学位取得の必要性を感じ、このコースを受けるに当たりまた数学と向き合うことになりました。

コース中のつまづき①テキスト(PDF版)に間違いがいくつかある

2021-2022 Term1現在、コースで使われているテキストはAlgebra and Trigonometryというものです。

私はUoPeopleのテキストを学習する際は、iPadのGood Notesというアプリで書き込みをしたいがためにPDF版を利用しています。しかし、PDF版はかなり乱丁があるうえに修正が遅いので、コース中に説明を読んで「あれ?ここ違くない?」と引っかかることが少なくとも3回ありました。

間違いを見つけた場合はこちらから報告できるので報告したのですが、私がした報告は何週間か経ってもIn reviewのままでした。しかしある日Web版を見た所、Web版は直っていました。気になって昔のErrataを見ると、かなり以前に「直したよ〜」と書かれている報告がWeb版には反映されているもののPDF版には反映されていないということもありました。

数学では式などに乱丁があると意味がまったく変わってしまうので、ぜひ早く反映してほしいところですが、無料のテキストということもあってある程度は仕方ないのかもしれません。

今後受講される方、もしPDF版へのこだわりがないのなら、Web版を見たほうが良いと思います。

私はどうしてもPDF(iPad+GoodNotes)にこだわりたかったので、諦めて適宜Errataを見ていました。

コース中のつまづき②テキストのExerciseの正解がわからない

無料だからなのか、それとも日本国外のあるいは大学のテキストはそういうものなのか、Exerciseの正解が全問掲載されておらず(カンニング防止の為か、奇数番のみ解答掲載)、途中式は基本的に掲載されていませんでした。今まで私が授業で使ってきた日本の高校の教科書や問題集だとたいてい演習問題の答えは全部掲載されていて、丁寧なテキストだと途中式も全問書いてくれたりしていて自習がやりやすかったのですが…。

このような状況だと、自分で出した答えが違う場合に、そもそも途中式のどこかで計算を間違えているのか、それともやり方がそのものを間違えているのか?など、確認したくても自分一人ではなかなかできません。インストラクターに聞いてもいいのですが、ただの計算ミスだったらと思うとちょっと気が引けます。

一度、途中の因数分解を間違えていてなぜ答えが違うのか途方に暮れたことがありました。また、組立除法でしょうもない計算ミスをして答えを導き出せなかったこともありました。これらは関数電卓では出せないので、こういうときに、それぞれの計算が合っているかどうか確認できるツールを使うと便利です。

因数分解Expand Calculator - Symbolab

組立除法:Synthetic Division Calculator - eMathHelp

複素数計算:Complex number calculator

また、任意の三角形を描きたいときはこちらが役立ちました:

Online Triangle Calculator. Enter any valid values and this tool will take it form there!

「定理名+calculator」など英語で検索すると目的のものが見つかることも多いと思います。しかし、そういう検索をすれば便利なサイトが見つかる、ということを知らなければ途方に暮れていたかもしれないので、シェアさせていただきました。これらのほかにもいろいろ便利なサイトがあるようなので自分にあったものを見つけられるといいと思います。

ちなみに私は、答えがない問題はこの手法も使えないので、解くのを諦めていました。Exerciseは量が多いので、他の時間との兼ね合いで、自分の苦手な所や集中して取り組みたいものだけを解くというやり方でも個人的にはいいのではないかと思います。

また、テキストにもリンクが貼られている下記YouTubeチャンネルの演習動画は忘れず視聴したいところです。

www.youtube.com

他にも、下記のチャンネルにもお世話になりました:

www.youtube.com

www.youtube.com

コース中の工夫①時間のあるときにテキストの先読み&飛ばされた部分を読んでおく

MATH 1201は、今まで自分が受けたコースに比べると毎週テキストを読む量が多いですが、その中で比較的量が少ない週と多い週がバラけていました。

テキストの読むべき範囲を全部乗せることは避けますが、シラバスを見るだけでもだいたいどの週がテキストのどのユニットかは見当がつくので、前もって必要になりそうなユニットのテキストを時間のあるときに読んでおくとかなり余裕を持って課題ができるのではないかと思います。

私はたまたま、テキストが難しく量が多い週がコロナワクチン注射の週にかぶっていることに気づき、「その週は熱が出るんじゃないか…」と想定して内容を先読みしたり集中的に予習したりしました。

まさにそのとおりでその週はワクチン後に熱が出て数日だるかったので、その作戦は成功だったと思います。

また、テキストは最初から最後まで読まされるのではなく飛ばされるユニットもあるのですが、その飛ばされたユニットの内容の知識が突然問われることもありました…。「え、なにこれわからん」と思ったら飛ばされたユニットにその説明がないかどうか確認してみてください。

コース中の工夫②数学へのモチベ上げ

もともと「数学は苦手…」という意識から入ったのでTerm中に数学に対するモチベが上がらなかったことは何回もありました。

そんな折、以前から私が一番好きなYouTuberであるQuizKnock(クイズを中心に学習系動画も上げている)が、10月の頭に「数学が好きになっちゃう放課後」という動画を出していてめちゃめちゃモチベーションが上がりました。

www.youtube.com

www.youtube.com

正直わからない所も多かったですが、数学について楽しそうに話している人たちを見るとなんだか数学が今までより身近なものに思えてきました。「数学が好き」になるのに必要な前提条件って、実は「複雑な問題を解けること」である必要はなくて、もっと自由にそれぞれの人が自分にとって数学の好きなところを見つけるだけでもいいんじゃないかと思えました。

動画内で須貝さんが、数学の用語で友達と遊んでたらそのうち数学が好きになる、というようなことをおっしゃっていたのですが、本当にそうだと思ったし、私もそんなふうに数学用語で遊べる友達が欲しいです。(?)

鶴崎さんのWebのインタビューも素敵でした。「数学は1000年後のためにやる」なるほど〜。

web.quizknock.com

web.quizknock.com

ちなみにその影響で関数電卓はQuizKnockがスポンサーしていたものを買いました。😂

 

また、私は最近図書館通いが趣味なので面白そうな数学の本を見つけたら借りて読んだりしました。こちらもモチベ上げに役立ちました。

とてつもない数学

数学の面白い話や天才数学者の話がたくさんあって今まで数学に馴染みがなくても読みやすいです。出てくる数学者たちがデフォルメされて描かれているのですが絵がかわいいのでそれで親近感が湧いてしまいます。「無限」には種類がある、という話が印象的でした。

数学大百科事典 仕事で使う公式・定理・ルール127

数学のコースを受けることをTwitterでつぶやいたときにUoPeopleの先輩であるYaeさんにおすすめしていただきました。

一番ありがたかったのが、「この公式・定理は実社会でどのように使われているか?」といった説明と、実用度が星1〜5で表現されているところです。

高校で数学を習ったときは、どの公式も同じような重要度で語られるところと、実世界でその数式がどう役立つかわからないところが嫌いでした。

しかし実際には実生活でよく使われているものと、実生活ではそこまででもないが受験には頻出なものとがあるわけで、それがこの本によってわかりやすく表記されていることで(目安ではあると思いますが)、自分の中で大事なことはなんなのかが少し見えてきたような気がしました。特に、自分の目的を考えたら自分は研究者になるわけではないので、究極的には実用度の高いものだけを中心に学べばいいのだろうと思いました。

たとえば私は高2で複素数を習ったときに「なぜ存在しない数を学ばなければいけないのか理解できない」と思ったことが数学に躓くきっかけの一つになりました。しかしこの本では、実用の世界では複素数複素数平面の回転での利用が主であり、高次方程式の虚数解は「タイムマシンを使うようなもの」(現実には起こりえない仮定の話をしているということ)と表現されていたのが印象的でした。

ああ、そうやって、「なぜこれを学ぶのかわからない」と思ったことがそもそも「そこまで実用的ではない」と最初からわかっていたらそういう気持ちで取り組めたなあと。また、高校のときには「なぜ三角関数を学ぶのだろう」とも思いましたが、そちらはとても実用的で学ぶ意義のあるものだなあとも今あらためて思いました。

自分はやはり「この数式は実世界ではどういう意味があるのか?」がわかって初めて学ぶモチベーションが生まれるのだ、と、この本を通じて気づけたことが一歩前進でした。

優雅なe^{iπ}=-1への旅

数学で最も美しいと言われているオイラーの等式に関する本。実は自分の母がこれの旧版を家に置いていて、たまたま見かけた表紙に書かれているオイラーの等式に、高2の私は面食らいました。なんじゃこりゃわけわからん、と。なんならそれが高2のときに数学は私には無理なのではと思った理由の一つでもありました。

しかし今回改めてネイピア数とド・モアブルの定理を習い、「ああ、この先にオイラーの等式があるのか」と、まだ完璧に理解できたわけではないですが、少し掴めたような気がしました。

そして改めてこの本を読んでみることにしました。難しいのでまだ途中までしか読めていませんが、序盤に書かれている「数学の記号は貨幣のようなもの」という話が好きです。本来、物々交換として価値があるのは「金」だったはずが、今ではみんな、金ではなく貨幣を信用して使っています。数学の記号も似たようなもので、そこに意味をどう見出すかは使う人間次第なのだ(意訳)、という話です。

数学との向き合い方の変化

コースを修了して思ったことは、いま大人になって以前逃げた数学とまた向き合うことができたのは、いい意味で完璧主義というかゼロイチ思考を捨てられたからのような気がしています。

高校の時は、一度躓いたら「もう何もかもすべてわからない」と思ったし、授業で説明が理解できないだけで復習もしないうちから「自分は馬鹿だ、数学は苦手だ、もう諦めよう」と思ったりと割と極端な思考をしていました。

しかし今はもう少し冷静に状況を見ることができるようになり、「ここがわからないけど、こっちはわかる、わからないところを中心にやろう」と俯瞰的になれたり、「応用がわからないけど基礎はわかる、テストでは基礎だけでも確実に落とさないようにしよう」と実利的になれたのが良かったと思います。

裏を返すと、そういったふうに「完璧に理解することを目指すよりもコースパスできるレベルを目指す」という戦略で今回Termを終えたので、知識が本当に自分の身になったかどうかは正直わかりません。一ヶ月後にはまたすべて忘れているかもしれない…。

しかし、今自分にとって最も意義があることは、前向きな気持ちで数学のコースを終えられたことです。完璧にすべてを理解することを目指していたらまた挫折していたかもしれない。忘れたらまたやればいいのだと、自信がつき、晴れやかな気持ちでいます。少なくとも今はそう感じています。

10年以上も逃げてきた数学に向き合う機会をくれたUniversity of the Peopleに、今は感謝しています。