技術同人誌の初執筆、 #技術書典 16とFrog Conference #frogconf での販売、アワード申し込みなどの振り返り

5月26日に池袋サンシャインシティで行われた #技術書典 16 と、5月25日〜6月9日に行われた技術書典オンラインマーケットに出店し、本を出版しました。また、6月22日カナダのバンクーバーで行われたFrog Conferenceでも販売させていただきました!

本についての詳細はこちら:

nappan23.hatenadiary.org

コミュニティで本を出版すると決定するまで

私はもともと同人誌・技術同人誌が大好きだったので、ずっと本を出したいと思っていたのですが、自分一人の力では成せる気がししていませんでした。これまでにも、技術ではない一般同人誌の発行と、また別のコミュニティでの技術同人誌に寄稿しての技術書典オンライン参加のみはしたことがあったのですが、技術書典でオフライン参加したいという気持ちはずっと持っていました。

そんな中、私の所属している、日本語話者で海外のTech系で働きたい・働いている女性とノンバイナリのコミュニティ「Port」のメンバーでみんなで作ったらどうだろうかというアイディアが急に降って湧いて、コミュニティで声をかけてみたら、私以外にも同人誌の執筆に興味を持ってくれた人が何人かいたので、Portとしてサークル参加を決め、5月の技術書典に合わせて本を発行することに決定しました。それがこちらの合同誌「Port Tech Book」で、最終的に私含む11人の大所帯で発行する本となりました。

techbookfest.org

著者の一人EmilyさんによるPort Tech Bookの紹介記事:

note.com

発行にあたっては、これまで似たようにエンジニアコミュニティで合同誌を出されている事例を探し、どのように同人誌が発行されていたかを参考にさせていただいたりしました(下記のwirohaさんによるCodePolarisさんの記事を参考にさせていただいたりしました)。また、CodePolaris代表者のかづみさんには技術書典14のときにご挨拶させて頂き「いつか私の所属するコミュニティでも本を発行したいんです」と直接お話させていただいたり、実際に発行する段階で質問をさせていただいたりすることができ、本当にありがたかったです。

zenn.dev

実は、最初に発案したのはもう1年以上前であり、参加したいとずっと思っていましたが、日本への一時帰国のタイミングも見計らわなければならなかったし、仕事やその他に忙殺されている時期などがあり、やっと今年叶えることができて本当に良かったです。

本のタイトルに女性・ノンバイナリと入れていますが、これは著者陣が女性・ノンバイナリであるという理由であり、読者を性別で限定する意図はありませんでした。内容はどのような性別の方にも手にとって頂けるものとなっています。このタイトルによって本を届けられた人もいれば、このタイトルで敬遠してしまった人もいるかもと思っていて、難しいところだなと思いました。次回以降もっと良いタイトル付けができるようになりたいなという思いがあります!

個人誌の作成

私は以前から私の海外初就活の記録についてを公開したいと思っており、当初はPort Tech Bookにその記事を入れようとしていたのですが、いざ入れてみたら私の記事だけで全体の半分以上となってしまって非常にバランスが悪いものになってしまいました。そこで急遽私の就職に関する話を切り出し、一冊の個人誌としてPort Tech Bookとは別に発行することにしました。これが今回の2冊目の新刊「海外生活経験ゼロからカナダでソフトウェアエンジニアになった話〜英語勉強&就活対策〜」です。

techbookfest.org

結構直前に決めたために、通常価格どころか値上がり価格の締切での入稿になってしまいました。個人本を出すかどうかは最後までずっと悩んでいて、もしかしたら出さなかった可能性もあったのですが、そうしていたら全然違う未来があったんだなと思います。ですが、出したことで様々な前向きなフィードバックを頂けたので、今は出してよかったと心から思っています。

同じカナダ在住ソフトウェアエンジニアの先輩である @chezou さんが私の本の紹介記事を書いて下さいました:

chezo.uno

「まちあわせFM」でも本を紹介していただきました。執筆者 chisacoさんの裏話、manaeさんの技術書典で買った本の紹介なども!

podcasters.spotify.com

海外からのサークル参加

私が現在海外在住なことがあり海外からのサークル参加申込みでちょっと引っかかったところがありました。技術書典の申し込みにあたっては、日本の住所、電話番号、銀行口座の入力が求められるうえ、住所と銀行口座の名義が一致していなければなりません。私は技術書典の前後数週間は日本に一時帰国していることが決定していましたが、申込み時点ではカナダに住んでいたので、私が日本にいない間に荷物を配送されたり電話がかかってきたりしたらどうしようと思っていました。

最初、日本在住のPortの他のメンバーで名前を借りて応募しましたが、実はそのメンバーが今回の技術書典に出店する他のサークルの手伝いもしており、そちらと重複した名義になってしまっていたため、技術書典から一度申込みの差し戻しがされました。

いろいろ考えた結果、今回は日本にいる母に協力を仰ぐことにし、実家の住所で登録し、私が日本にいない間の手続きは母に行っていただくことにしました。ちなみに母は自分でも仲間と一緒に同人誌を作ったりしている人なので、同人誌作成にめちゃくちゃ理解がありました。母、本当にありがとう。

執筆

執筆にはRe:VIEWを使い、GitHubでのコミュニケーションを行いました。私は以前、別のコミュニティの本への寄稿でRe:VIEW Starterを使ったことがあったので基本的な操作はすぐに思い出すことができました。しかし、今回はRe:VIEW StarterではなくRe:VIEWで始めてしまったので、最初は違いをよく理解しておらず「なぜこのコマンドが通らないんだろう」というところで詰まったりしました。皆さんもRe:VIEWRe:VIEW Starterの違いにはご注意下さい。

Portにはこれから就職を目指している人もいるので、そういった人たちにとっては、執筆を通してGitHubでのコラボレーション方法や様々なコマンドの扱いの経験が得られたのは良かったのではないかと思います。

技術書典オフラインイベント

もともと技術書典のファンで、はるか昔コミケにもサークル参加したことがあった私は、即売会のおおよその流れは理解していましたが、それでも久々なこと、技術書典自体の申込みは初めてなことで、勝手がわからないところもありました。

特に迷ったのがスペースのセットについてです。今回の技術書典では「完全手ぶらセット」というスペース準備のために必要な道具が揃ったセットを用意していただいていたので、こちらを申し込み、当日は手ぶらで行くことにしていました。

しかし実際スペースに着いて本を配置してから改めて考えた所、手ぶらセットに入っていた値札立ては一つしかなく、本立てや本カバーがないことで見本をどのように配置したらいいかわからず、売り子のmanaeさんと相談し、売り子miyakeさんに場を任せ、開場前にサンシャインシティ内の100円ショップで本立て2つ、値札立て1つ、本カバー2つを購入し、スペースの準備を間に合わせることにしました。

手ぶらセットには非常にお世話になりました(「あの布」を用意せず済んだ!)ので、大変感謝しており、こういった計らいが次回以降もあれば助かるサークルがたくさんいると思います。しかしサークル参加側としてはそれに甘えず、「どのようにスペースを飾り付けたいか?」を頭の中に描き、足りないものがないかどうか事前に想定しておくべきだったと思います。開演前に100円ショップで上記商品を購入できたのはたまたまだったので、このようなギリギリの行動はできれば次回以降は避けたいと思います。次回は、お品書きやスペースの飾りつけなど、もう少し工夫できたらいいなと思っています。

当日は本当にたくさんの人とお話できて嬉しかったです。技術書典の醍醐味だなと思ったのが、気になった本の著者に直接お話しにいくことができたり、お話した方が代わりにこちらのブースに来てくださったり、お隣のブースの方とお話させていただいたりと、インターネット上だけでは中々できない貴重なコミュニケーションを取ることができました。あと #rubyfriends もできました。当日会場にいたRubyistのRubyKaigiノベルティ(かりゆし)着ていた率の高さ…。

お隣のブース「ノート学」さんとも本を買いあって色々お話できました!:

note.com

同じく英語学習本を出されていた「熊本技人舎」さんのzennの記事でもPortの紹介をしていただいていました🙏:

zenn.dev

アフターでは、別のブース「Bubblesort Zines」で出店していたAmy(https://x.com/sailorhg)と、りさきゃんたちと一緒にご飯ができて楽しかったです。Port Tech BookにはりさきゃんによるAmyのインタビューがあるので、2人のファンでまだ見てない人は絶対チェックして下さい!!!

Amyの本もまだ技術書典オンラインで買えます!5種類あります!

techbookfest.org

techbookfest.org

技術書典オンラインイベント

技術書典のオフライン当日が終わっても技術書典は終わりではありません。オンラインマーケットが技術書典オフラインの前日から6/9まで開催されていました。

私は当初、このオンラインマーケットという場でいったいどれだけの本が売れるのかあまり理解していませんでしたが、振り返ってみると私が当初想像していた以上に売れていました。特に最終日は駆け込み需要が多かったです。

オンラインマーケットでは、オンラインでどれだけ宣伝に力を入れられるかどうかが鍵かもしれません。オンラインマーケット開催中、私がなにか本についてXでつぶやくと、それがたとえちょっとしたことだったり、一見いいねがそれほど多くないような投稿だったとしても、そのつぶやきの後に購入通知が来たりしたので、如何に多くの人の目に触れさせ、欲しい人に届けられるかどうかが大事なのだろうと感じました。

オンラインでのプレゼンスを高めるにあたってはmochikoAsTechさんの「届ける工夫 ~欲しい誰かに見つけてもらえる60の方法~」に大変お世話になりました。今回、本のためのハッシュタグを用意するアイディアなどは、こちらの本を参考に実現しました(今回作ったタグが長くて大変だったので次回はもうちょっと工夫したいなと思います!)。本を出版する人のバイブルとして今後も折に触れて参照させていただきたいなと思っています。

techbookfest.org

「刺され!技術書アワード」への応募

オンラインマーケット期間中、技術書典公式による、「刺され!技術書アワード」というアワードが行われており、こちらに応募があった作品は技術書典公式のYouTubeで紹介して頂くことが出来ます。

最初私は「アワードなんて応募していいのかな…?」などと思っていましたが、「Port Tech Bookに関しては沢山の人が関わっていて自信を持っておすすめできるのでとりあえず応募しておこう!」と思い、まずPort Tech Bookの応募を行いました。実際にYouTubeで本を紹介をしていただくことができて、紹介の直後に購入通知が来たので、「見ていただけているんだ…!」「アワードは応募するだけでも人の目に触れる機会があって販売促進につながるんだ」と実感することができました。

Port Tech Bookの紹介 44:20あたりから:

【書籍紹介】技術に出会える - 技術書典16スペシャルオンラインイベント - YouTube

Port Tech Bookのアワード応募をしたあとも、個人本に関しては、「いや…でも…私の個人本をアワード応募なんておこがましい…そんな大層なものじゃないし…」「ひっそりやっていたい…」とまだウジウジ悩んでいたが、途中でもやもや悩んでいるのが馬鹿らしくなり、なんでPort Tech Bookを申し込んでおいて個人本は申し込めないんだ?応募しちゃえ!えい!と急に思い立って、個人本も応募してみることにしました。

こちらは最終日のクロージングセレモニーのYouTube配信にて紹介していただきました(私の変な感情のせいで二度にわたってサークルをご紹介頂くことになってしまったのが申し訳無かったです)。

カナダ就活本の紹介 2:18:25あたりから:

【クロージングセレモニー】技術に出会える - 技術書典16スペシャルオンラインイベント - YouTube

アワードに応募したので、書籍紹介のYouTubeを毎回リアルタイムでワクワクドキドキしながら視聴していました。日本にいる皆さんが夜の中、私は朝の仕事前に視聴したりしたりもしました。クロージングセレモニーでは、書籍の紹介が終わっていなかったという理由で終了時間が延長されたり、その間に参加者による最終日購入ラッシュ(3秒に1冊の購入!)が行われていたりと、オンラインならではの盛り上がり、お祭り感を感じることが出来ました。技術書典としては売上が歴代1位だったそうで、本当におめでとうございます!

Port Tech Bookが「刺され!技術書典アワード」のファイナリストに!

7/2にアワードの結果が発表され、なんとPort Tech Bookを「刺さる部門」のファイナリストに選んでいただいていました!応募することで多くの人の目に触れさせたい、届けたいというモチベーションでの応募だったので、本当に選んで頂けるとはあまり思っていなかったので、驚きとともに嬉しかったです。

大賞は取れませんでしたが、それでも他のファイナリストのラインアップを見ると、錚々たるメンバーで(技術書典に何回も参加されているベテラン勢や、他の部門にはプロの作家の方もいらっしゃったり…)そもそもファイナリストとして選定頂けたことがまずめちゃくちゃ光栄だなと思いました。

Port Tech Bookの紹介は27:35〜あたりから

www.youtube.com

アワード応募によりたくさんの経験を得ることができたし、私自身もYouTube視聴でアワード応募されていた新たな素晴らしい作品たちに出会えたので、これからの技術書典でも行われるのが楽しみです。

Frog Conference

オフラインイベントが終わった時点でPort Tech Bookの紙の本の在庫が余りそうだという見込みがあったので、またどこか別の売る場所を設けることにしました。ただ私は技術書典終了後すぐカナダに戻り、しばらくカナダに居るため、次の技術書典には出れそうになく、また日本の別のイベントに出れそうな目処が立たなかったので、6/22 にカナダ・バンクーバーで行われたFrog Conferenceにて販売ブースを設けて頂き販売させて頂くことにしました。

2024.frogconference.com

Frog ConferenceのオーガナイザーであるFrogは、北米でTech系の日本語話者が集まる最大規模のコミュニティであり、Frogの運営母体はカナダのTech系移民者の永住権やビザ取得のサポートなどを行っている企業です。私の知る限り北米でこれだけ多くのTech系日本語話者が集まるコミュニティは他に存在せず、またFrog ConferenceのようなTech系の日本語カンファレンスが北米で行われたという話も他に聞いたことがありません。唯一無二の新しいチャレンジを行っている団体・カンファレンスで、当日は100名以上の人が日本、アジアや北米から集まったとのことです。

私は残念ながら実際に参加することができませんでしたが、Port Tech Bookの執筆者のYuna Okadaさん、Sachaさんに参加して頂き、ブースでの販売を行っていただきました。

実は、当初の想像以上に技術書典オンラインマーケット期間中に物理本が売れておりオンラインイベント終了後には実は物理本の残り冊数が数冊になってしまっていたので、Frog Conferenceではたった数冊のためにブースを作っていただいたり、Yunaさん、Sachaさんにブースの準備や番をしていただくことになってしまって申し訳ない気持ちもありました。しかし、なんとかこの場で無事紙の本を完売することができました!

Yunaさん、Sachaさん、このような機会をくださったFrogの皆さんに本当に感謝です。場も盛り上がっていたようだったので、次回こういった機会があったら、その時こそは直接会場に行って参加したいなと思います。

沢山の感想を頂いて嬉しかった

発行後、オフライン・オンライン問わず沢山の感想をいただくことが出来ました。ここでは全てを紹介し切ることは出来ませんが、一部を紹介させてください。

「本」の執筆の魅力と価値

今回の本の執筆は、ブログやSNSで情報を発信できる時代において「本」を発行する意味とは何なのだろうかということを、いち執筆者として考える機会となりました。

私がまず考える、本、とくに同人誌の面白いところは、「自分が対話したいと思う人数を自分で一定程度制限」することが出来ることだなと思います。

インターネットで記事を公開すると、自分の文章が何人に読まれるのかを制御することはできません。たとえば、友人や身の回りの人にだけ向けて書いた文章が、なぜか拡散され、多くの人の目に晒され、外部からの予期せぬフィードバックを受け、疲弊してしまう、などといったことが起こり得えます。

一方、オフラインでの同人誌の販売数は自分で決めることが出来ます。たとえば、多くの人に読まれたいから刷る部数を数百冊にするとか、この本は本当にわかってくれる人だけに届けたいから発行を数十冊で留める、など。もちろん手を離れた本がその後誰の手に渡るかはわからないので完全に制御できるというわけではありませんが、「書いた文章を想定外の数の人々の目にさらされる可能性を避けたい」のなら、同人誌という媒体はその期待にある程度答え、自分のある程度希望する量の読者とのインタラクションを叶えられるツールとなり得るのだろうと思います。

私は文章を書き、読んでもらうことが大好きですが、自分の感情のコントロールが出来なくなるほど多すぎる人に見られることにはプレッシャーを感じるし、メンタルの状態がよろしくない方向に向かってしまうこともあります。以前、一度だけ書いた記事が想定以上のページビュー数に到達したことがありましたが、そのときには自分が感情的に制御できないほどの通知が来て、様々な賛否両論のコメントを頂き、疲弊してしばらくブログを書くことができなくなってしまいました。それ以来、ブログのPVが数万ビューには到達しないほうがメンタルのコントロールがしやすくて嬉しいと思うようになりました。もちろん、ほとんどのブログは頑張って書いても、狙っても数万ビューになど到達しないのだから杞憂なのかもしれませんが、それ以降「自分の想定より多くの人に見られたらどうしよう」という不安は常に抱えるようになりました。しかし、かといって書いた文章に一切の反応が来ないのはそれはそれでさみしいというわがままな感情を抱えていました。そんな中で本を書くという思いに至り、実際に本を出版し、自分が希望するような読者とのインタラクションを技術書典で行うことができたのは幸せなことだったなと思います。

また、本はインターネットとは鮮度が違う情報を仕入れることが出来る場だと思います。インターネットに書く情報は、ある程度最近起こったことをシェアすることが暗黙的に求められているように思いますが、本は割と、「これはX年前に起こった出来事である」のように書き出して始めれば、比較的いつの情報を載せてもいい空気があるように思います。

現に私の就活に関する話は2年前の話なので、今更ブログにするには鮮度が無さすぎるのでは、と感じてブログ公開をためらっていましたが、本というメディアにすると不思議と2年前の情報でも心理的な抵抗が少なく発表することができました。実際に気にしている人がどれぐらいいるかはわかりませんが、自分のメンタルの状態として、オンラインに就活記事を公開するよりは、安心して出すことが出来たと思います。

また、私の本に限らず、本(小説ではなくノンフィクション)という媒体一般について思うことですがが、本は発行された直後は一般的に価値のある情報として多くの人に広められます。しかし、発行から数年すると、情報が古いので読む価値がないものと判断されてしまうことがあります。しかしまた数年〜数十年すると、「当時はこのような考え方が一般的だったのだ」「当時このようなことを発行したことには意味があった」と、昔を振り返る貴重な資料となり得ます。もちろん、そこまでに行くまでに多くの本が捨てられてしまうのかもしれませんが、「昔よく見ていたウェブサイトを遡る」よりも、「昔読んでいた本が押し入れから出てきてまた出会う」という体験のほうが不思議と良く起こります(少なくとも私にとっては)。インターネット(SNS)の情報はフローのことが多いし、本の情報はストックのことが多い。本には本のコミュニケーション方法があり、それはインターネットで完全に置き換えることは難しいと思います。今回の技術書典出店は、これからも私は本を使ったコミュニケーションをしていきたいなと考える切っ掛けになりました。

本を書くことにはメリットがある一方で、本を生み出したということは、それも一つの責任でもあるなと思います。先述のように同人誌なら読まれる数はある程度制御できる可能性はありますが、読む人は制御できません。私はこの本を書く上で私の本が職場の上司に読まれることは想定していませんでしたが、上司に本のことが知られてしまい、物理本を一冊渡すことになってしまいました…。本に社内の同僚へのインタビューを入れた時点でこの想定をするべきだったかもしれませんが…。その上、上司に「めっちゃCoolだからその話プレゼンしてよ!」と言われ、先日社内で私達の発行した本、技術書典についてのプレゼンを(RubyKaigi参加の報告とともに)することになってしまいました(プレゼンはなんとか無事終了しました)。

こんなことならもっと仕事で高く評価されそうなことをもっと書いておくべきだったのかもしれませんが、まあそんなことは今更言っても仕方ないです。本を発行した時点で、「XXさんには読まれたくない」は成立しません。逆に言うとPort Tech Bookも就活本も、上司に読まれる前提で書いていない、本音で書いた本なので、手に取ってくださった皆さんにはぜひそれを味わって貰えれば幸いです。

売上と収益

Frog Conferenceが終わった時点での売上は、オフライン・オンライン含め

個人誌 256冊(物理本初版80冊依頼で94冊納品+オンラインマーケット増刷70冊)

合同誌 124冊(物理本初版80冊依頼で98冊納品)

合計売上 252,000円

でした。

ほかの執筆者も同じようなことを書かれている人がいますが、この売上では同人誌一本で稼ぐなんて到底できません。印刷費や交通費、諸経費を売上から引いた利益を時間換算したらアルバイトの最低賃金より安いものになるでしょう。特に私は私の個人の就活本については、就職をした2022年頃から当初はブログ用にしようと書き溜め、何度も推敲を重ねたものが2年かけてやっと本になったので、時給で言ったら、私の地元のアルバイトの最低賃金より低いものになると思います。

なのでこれは本当に「好き」でないとやっていけないなと思います。今回あらためてやってみて思いましたが私は寝る間も惜しんで執筆活動に没頭してしまったし、技術書典直前にRubyKaigiと会社の同僚を連れた関西旅行があったのですがその間も隙間を縫ってずっと執筆していてずっとアドレナリンが出ていたし、イベントに参加して、いろいろな人が直接私の本を取って感想をくれたり直接コミュニケーションが取れたことが本当に楽しかったので、利益にならなくても是非またやってみたいと思っています。

いつになるかわかりませんが、Port Tech BookもVol.2が出せたらいいなと思っています(今回参加できなかったメンバーから次回は参加したい、という意見をいくつか頂いています)し、個人でもまた何か本を出してみたいです。そのときはまた皆さんどうぞよろしくお願いいたします。

電子版、まだ購入できます!

技術書典オンラインマーケットというイベントは終了しましたが、今回販売した本の電子版はまだ購入することが出来ます。先ほども述べたように本の内容は古くなりうる情報ではあり(特に私の就活本)、今回は確定申告が必要な額に到達したことから会計の処理もしなければいけないので、永遠に販売し続けるというわけにはいきませんが、しばらくは(少なくとも今年末までは)売り続ける予定です。

Port Tech Bookが大人数での発行だったために様々なところで諸経費がかかっていたり、個人の就活本は割高入稿になってしまったことで利益率が高くないので、電子版が売れれば売れるほど嬉しかったりします。Port Tech Bookについては、参加したメンバーにちゃんと還元できたら、そのあとは寄付も考えています。興味のある方でまだ買われていない方は是非チェックして頂ければ幸いです。

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